神の意図、ミドリムシの決意
午前四時半、暗闇の中。私は緑色のスリッパを枕にして布団の中で眠っていた。一体何が起きたのか、ここはどこなのか、記憶を呼び起こす。
解決していないはずの問題がLINEの中で決着していた。知らない私が会話をしていて、けれどそれは間違いなく私だった。
ツインソウルと再会した。
来るか来ないかも分らないままその日は来た。どういうつもりか連絡が無いのだ。もしかしたら彼が来るというのは私の思い込みだったのかもしれない。仕事を終えて会社の人を飲みに誘おうかなとも思ったが踏みとどまり、携帯を見ると「用事があるので8時半までなら大丈夫です」と、彼から連絡があった。
はぁ?
何様なのでしょうか。
ぐぐぐぅっとそれを私の海の水深3,700m辺りに沈めて、何故かデパートに入り髪留めを買う。そして何か食べたいという彼の為に混み混みのデパ地下へ突入する。即撤退。
速足で彼のホテルへと向かう。電話するが繋がらない。別に。気にしない。むしろそれを楽しんでいる。ホテルの下でストーカーのように電話するが彼は出ない。あはは。
ようやく彼と久々の再会。熱い抱擁など無い。感動的なものは一切無い。ただ違和感も無いのだ。何なのだろうか、これは。お腹空いたと彼は私と歩幅も合わせずスタスタと歩く。私はこのためにフルマラソンを走ったと思えるほど、彼のスピードに合わせて小走りする。置いて行かれる気が全くしない。
彼といた少しの間私は多くのミッションをクリアした、つもりだ。
そのお陰かどうかは分からないが、見送りに行った空港で私は彼の完璧な愛を感じた。
また会えるかどうかわからない彼の乗った飛行機を見送った。
何事もなかったかのように家に帰ると孤独が爆発しそうになって、私は走りに出た。大好きな公園へ行った。都会には空が無いと思っていたが、ここにも美しい夕日があることを発見した。
家へ戻りご飯を作って食べ、晩酌をして平和に週末を終えるはずだった。
それなのに私に何が起こったのか。
彼の置いていった大量のごみの中から、彼の書いた誰かに宛てた手紙が見つかった。私はただゴミを捨てようとしただけなのに。嫉妬などできる立場ではないが、自分がさっきまで感じていたものが幻のように感じられて私の感情が暴れ出す。
これは神の意図なのか。
不覚にも飲んでしまったようだ。こうしてスリッパを枕にして目覚めるまで私の記憶は無い。
彼と話をして私は納得したようだ。自分の直感を信じて良かったのだと私は腑に落ち眠りに落ちたのだ。今までとの違いは平和的に問題を解決しようとしていたこと。それは彼に会って愛が補充されていたからだろうか。
自分の直感で感じたものの方が、理性で考えたことよりも確かである気がする。
それは彼のことに限ったことではない。何かによって与えられる直感を大事にしたい。
理性や誰かの作った概念を捨てて新しい世界へ。
ドイツへ帰った彼からメールが届いた。
とても温まるメールだった。まだ始まったばかりの今年の冬を乗り切れられると思えるほど。
ミドリムシは思う。
きっと私は世界を変えられるのだ。
hoco